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2005年11月13日

観光を統計的に見てみよう

 毎月各家庭に配られる「広報かくのだて」という広報誌がありましたが、同じものが角館町のHP(ホームページ)に毎月掲載されていました。
 最後のページに「町のミニミニ統計」というコーナーがあって、そこに人口などの統計とともに伝承館や、美術館の入館者数などの情報が掲載されていたのですが、その数字を拾ってグラフにしてみました。
 その月の数値だけでは見えないものが、1年分通して並べてみると見えてきます。

図をクリックすると拡大します。


 先ず、はじめに観光と直接関係のない2つの項目から見ていきます。
 (観光と関係ないんですけど、面白がって入れちゃったもんですから。へへへ)

■公立病院利用者数(グレー)
 グラフの上の方に表示されている「グレー」の線が公立病院利用者数です。
 病院なので季節変化はないと思ったのですが、冬場の1,2月に若干利用者数が減っています。通院していたお年寄りなどが冬場に通院する頻度が下がった為ではないかと想像しています。その反動か、3月に入るとポンと跳ね上がります。


■図書貸出冊数(緑の点線)
 グラフの上の方に表示されている「緑」の点線が図書貸出冊数です。(観光関係の線と離したかったので5倍して上の方に表示されるようにしていますが、5倍した為実際よりも増減が激しいように見えます)
 3月と、7月に少し増えています。これは学生が春休み、夏休みに入ったときに本を借りる為かもしれませんね。


 さて、ここから本題の観光関係です。

■観光客数(黄色)
 観光客ですが、この数字だけは、県の産業経済労働部観光課で作成している「平成15年秋田県観光統計について」と、「平成16年秋田県観光統計について」の「調査結果」から数字を拾いました。(※平成17年は未だないので17年は数値が0になっています。数値が大きくてグラフを大きくはみ出すので50で割ってあります。)

 ご覧のように50で割っても花見シーズンに極端なピークがあることが分かります。これは月毎の集計ですが、週毎に集計すればピークはもっと鋭く高くなるはずです。
 花見シーズン以外では、お祭りのある9月の数字が大きくなっていますが、その他の月はほとんど0付近にへばり付いてしまいました。如何に花見の時に観光客が集中しているかがわかります。これが角館の観光の問題点である事を以前「今年の花見も終わって」で指摘しました。

 世間では、花見シーズンの観光客が多い事ばかりが話題になりますが、それ以外の通常の月はどの程度の観光客数なのでしょうか? 1年を観光客数によって分類してみました。

<超繁忙期> 4,5月:2ヶ月合わせて150万人程度。但し花見の時期に集中。
<繁忙期> 8〜10月:12万人程度。9月は3,40万人ですが、お祭りの3日間を除けば8,10月並になると予想。
<閑散期> 12〜3月:2,3万人程度。冬季は観光客数も冷え込みます。特に12,1月は1万人台にまで落ち込んでいます。
<平常期> 6,7,11月:5,6万人程度。

 年間を通して平均しますと一日あたり6,700人程度ですが、これは花見シーズンの観光客が押し上げた数字です。平常期では1日平均2,000人程度繁忙期では4,000人程度です。角館の観光の実力を考えるときには、この数字を見るべきでしょう。
 1日2,000人とか、4,000人って言っても大きな数字ですよね。4,000人といったら人口の1/3近いですから。ただ、問題は宿泊率です。
 「平成16年秋田県観光統計について」の“表2−10 市町村別観光客数〔県内・県外別、宿泊・日帰り別〕”によれば、H15年の旧角館町の観光客の宿泊率は約3%2%、旧田沢湖町は約28%27%だったそうです。角館の全ての宿泊施設の収容客数の合計はおそらく400人ぐらいではないかと思いますが、そうだとしますと、角館の宿泊率が田沢湖ほどとまでいかなくても10%程度に上がれば、繁忙期にこれらの宿泊施設は満室になる勘定です。
 いかにして閑散期、平常期の観光客数を増やし、そして宿泊率を向上させるか、それが角館の観光の課題であり、知恵の絞りどころです。

■伝承館(赤)、平福記念美術館(青)、新潮社記念文学館(緑の三角)
 3つとも傾向はほぼ同じで、花見シーズンにピークがあります。そして何故か9月に若干落ち込みます。9月は観光客数が多いのに落ち込んでいるのは、9月の観光客はお祭りが目当てで伝承館などの施設には興味が向かないということでしょうか。

 3館の入館者数を一日あたりの平均入館者数で比較すると、
   伝承館:247人
   美術館:57人
   文学館:19名
と、かなりの差があります。
 文学館の19名はあまりに寂しいです。面白そうな企画を精力的にやっているのに。やはり場所の問題でしょうか。
 美術館は逆に場所的には問題ないにも拘らず、これだけ伝承館に水をあけられているのはどうなんでしょう。ちょっと少なすぎるという印象です。
 観光客で賑わっていそうな伝承館が247人というのも意外に少ないように感じますが、この数字は有料スペースに入場した人だけの数値だと思われます。無料のお土産コーナーなどもカウントすればもっと多いでしょう。


■角館町のホームページ(HP)へのアクセス(紫)
 (数字が大き過ぎるので5で割りました。)
 ご覧頂いて分かる通り、HPへのアクセスが観光シーズンにリンクして増減しています。つまり、角館町のHPを見ていた人は町の人だけではないという事です。一番アクセスの少ない月には、町民しかアクセスしなかったと仮定しますと、町のHPへのアクセス数の半分程度が観光客によるアクセスだという事になります。
 また面白いことに、HPへのアクセスのピークは、実際の観光シーズンのピークの1ヶ月前に来ています。つまり、「角館町のホームページが更新停止」にも書きましたが旅行先を検討する段階で町のHPにアクセスしているものと思われ、町のHPが観光客に対するガイドブックとして機能していた事を示しています。
 仙北市になった事に伴い、このHPが更新を停止した事は角館の観光にマイナスだろうと思います。このまま廃止されるようなことのないよう願っています。

P1010048.jpg


■今年の花見
 この比較は非常に興味深いものがあります。
 今年の花見は史上最高の人出でした。実際、町のHPへの月間アクセス数は今年の4月に最高を記録し、3月、4月の合算値は昨年を上回っています。

        去年   今年
 ------- ------- -------
 HPアクセス: 138,753  181,325
(この数字はHPへのアクセスが増える3月と、4月の合算値である。HPへのアクセスは観光客が増える1ヶ月前にピークになる。)


 ところが各施設の入館者数を見て下さい。(この数字は、実際に観光客が増える4月と、5月の合算値である。)

        去年   今年
 ------- ------- -------
 伝承館: 33,481  25,936
 美術館: 6,697   5,410
 文学館: 1,471   1,302

 驚いたことに3館とも昨年の方が多いのです!

 混み過ぎて入館する観光客の“率”が下がったというなら分かりますが、絶対数が小さくなっているのには驚きです。
 青柳家の入場者数もおそらく同じ傾向でしょう。武家屋敷の通りで商売をやっている商店はどうだったのでしょうか?

 何が起こったのか考えてみました。

 1.天気が良かったので、花見に集中して屋内の施設に入ろうとしなかった。
 2.混雑に嫌気し、滞在時間が短くなり施設に入る時間がなかった。

 1が原因ならどうしようもありません。どなたか是非昨年(04年)の天気を調べて比較してみてください。
 2が原因だとしたら、観光施策の見直しが迫られる事態になりますね。「1日あたりの観光客が増える -> 売上げが減る」ってことですから。観光客を倍増するテンミリオン計画なんてふっとんでしまいます。


■入場率(入場者数/観光客数)

 角館を訪れた観光客のうち何パーセントの人が伝承館に入場するのか月毎に見てみると、観光客数が多い月ほど入場率が下がる傾向があることがわかります。
 伝承館の入場率を見ると、花見客で賑わう4月は1.7%で最低。最高は3月で14.9%でした。あと比較的率が高いのが6,7,8,10,11月で10%前後でした。
 観光客が増えてもそれがストレートに入場者数に反映していないことが分かります。

 こうやってグラフにして眺めると色んな事が見えてきます。なかなか面白いです。
 皆さんも気づかれた事がありましたらコメント下さい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 「広報かくのだて」に替わって「広報せんぼく」が配布されるようになった。
 「広報せんぼく」にも“ミニ統計”というコーナーがあるが、こういった施設の入館者数は載っていない。3町村合わせると数が多くなるのでやむを得ないと思うが、統計自体は取っているはずなので別の形で公表される事を期待したい。

投稿者 taguchi : 2005年11月13日 23:22

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