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2006年03月29日

除雪学序説 その2

 津軽には七つの 雪が降るとか こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪 ...

 新沼謙治が歌ってヒットした“津軽恋女”の一節である。
 雪に色々な雪と呼び方があるように、“除雪”にも色々な除雪の方式と呼び方がある。

DSC_3845.jpg
 
<除雪>
 かなり広い意味で使われる。
 そこに雪があっては邪魔な場所から雪を“除(ヨ)ける”こと。
 “除雪機”、“除雪車”などにも使われている。

<排雪>
 積もった雪を脇に寄せるだけなく、さらに遠くに運ぶ意味合いで使われる。

<消雪>
 移動するのではなく、“消して”しまう。
 消すといっても、実際に消えてなくなるわけではなく融かして流す。主に、水をかけて融かす方式に使われる事が多いようだ。
 水にしてしまえば、重力に従って勝手に低いところに移動してゆくので、排雪にエネルギーを使わないのがこの方式の良いところ。
 道路や、駐車場に地下水をくみ上げて撒く消雪はもはや一般的。最近ではホームセンターで家庭用の消雪用の三角形のホースなども売られている。

<融雪>
 消雪と同じように雪を融かす方式だが、水をかけて融かす方式以外を指すことが多い。
 塩化カルシウムなどの薬剤は、“融雪剤”とは言うが、“消雪剤”とはあまり言わない。“融点”を下げて融かしてしまうところから“融雪剤”と呼ばれているものと思われる。
 また、電熱で屋根の雪を融かす装置や、土中に水槽を埋設する装置なども“融雪装置”、“融雪槽”などと呼ばれている。

<流雪>
 “流雪溝”でおなじみであるが、“流雪”という言葉だけで使われることはない。
 融かすのではなく、水に浮かべて雪を排雪する方式。角館の町なかでは一般的な除雪方法である。

<圧雪>
 他の方式は、雪を移動させる方式であったが、圧雪は移動を伴わないという意味で他の方式と一線を画している。
 北海道のように気温がマイナス何十度にもなるような極寒の地では圧雪路が多いのかもしれない。角館辺りでは冬でも暖気には路面の雪が融けてぐちゃぐちゃになる時があるので圧雪路を一冬維持するのは難しいだろう。しかし、この方式は排雪の必要がないので各家庭の除雪の負荷が大幅に軽減されることが期待される。

<その他>
 “○雪”という表現ではないが、他に<雪よせ>、<雪かき>、<雪おろし>といった言葉が除雪を表現する言葉として使われている。あと、除雪ではないが<利雪>という積極的に雪を利用しようという言葉もある。


 いつだったか電車の吊り広告に、水を特集した科学雑誌の広告があって、そこにこんな風に書かれていた。「水の不思議。水の固体は液体よりも軽い。」
 なるほど!言われてみればそうだ。通常、物質は固体の方が液体よりも重い。しかし、水は固体の方が軽いので雪や、氷は水に浮く。その特別な性質のおかげで流雪溝や、ドンベに雪を流すことが出来るわけだ。
 流雪溝とは、H2Oの固体である雪を H2Oの液体である水を使って流す仕組みだったんだな。
 上で見たように、除雪には色々な方式、呼び方があるわけだが、圧雪を除けば融かして水にするにしても、雪のままにしても結局は川に行き着く。そして、それははるばると運ばれて最後は日本海に排雪される。

 雪国の冬の生活に負担をかけるのもH2Oだし、それを排除してくれるのもH2O。
 ん〜、深い。

投稿者 taguchi : 2006年03月29日 00:35

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