« 打てば響く行政 | メイン | “日本カジノ創設サミット in 秋田”に行こう(その1) »

2005年11月24日

角館の観光を他の自治体と比較してみた

 この春、“今年の花見も終わって”で、角館の観光が花見に偏りすぎている事を書いた。先日は“観光を統計的に見てみよう”で観光客数と、施設の入館者数の関係について見てみた。
 今日は、角館の観光客数の月間推移を他の町村と比較してみる。データは例によって県の産業経済労働部観光課の「平成16年秋田県観光統計について」に拠った。
 比較する自治体は“ある程度の観光客数がある”こと、但し大曲や、大館などの“地方都市は角館とは産業の構成が違うので除外する”という基準で選択した。

 比較の対象に選んだ自治体は次の3つ。(16年度のデータなので合併前の自治体となっている)

田沢湖町:同じ仙北市で、関係が深いので選択。
象潟町:人口が近いのと、海水浴場があり季節ピーク性が高いと思われたので選択。
鹿角市:年間の観光客数が角館とほぼ同数なので選択。但し、人口は角館の2.6倍ほどある。

 それと、秋田県全体の平均と比較するために、秋田県全体の数値を県の人口で割って、角館の人口を掛けた数値を“秋田県調整後”として表示した。

図をクリックすると拡大します。

図をクリックすると拡大します。


 ご覧のとおり一目瞭然で、角館が他の町村に比べて非常に極端な季節ピーク性を持っているか分かる。

 観光客数の年合計を見ると角館は240万人強で、角館の人口で割り戻した秋田県調整後の56万人をかなり上回っており、角館の年間の観光客が多いのは確かである。しかしグラフを見て頂ければ分かる通り角館の観光客数が秋田県調整後をハッキリとした形で上回っているのは、花見の時期の4,5月と、お祭りのある9月、あと10月だけで、それ以外の月はほとんど同じぐらいなのである。つまり、花見と、お祭りの時期を除外すると、角館を訪れる観光客は平均的な他の町村と大差ないのである。
 瞬間最大風速的な花見の時期の観光客数がニュースになったり、年間の観光客数が大きいために“角館は観光の町”というイメージを持たれているが、こうして見ると実態はかなり違うのようである。(*1)


■観光の地域経済への貢献

 ピーク性が高いと観光産業における運営効率が悪くなり収益性が下がる。
 例えば宿泊施設では、花見のピーク時には大勢の観光客が泊まるから部屋数を増やしたいけれど、それ以外の季節はガラガラとなってしまうので、投資コスト、維持コストを考えれば部屋数は増やせない。人員配置でも無駄がでる。この事情はお食事処などでも同じだろう。
 どの月も満遍なく観光客に来てもらった方が効率が良く収益性は高くなる。
 また、“今年の花見も終わって”で指摘したように、花見のピーク時に合わせて駐車場を確保しなければならない為、武家屋敷の通りの一等地が花見の時期のわずか半月程度ほどしか使われず、これを観光資源として活用する事を阻害している。

 もう一つ、これも“今年の花見も終わって”で指摘したが、宿泊率が低い。
 県全体が9.1%であるのに対して、わずかに2.2%である。角館と年間観光客数がほぼ同じ鹿角市は13.4%、田沢湖町は27.4%だ。(*2)

 全国的な知名度があり、新幹線の駅まである、他の自治体がうらやむような環境にありながらこの数字は情けない。逆に言えば、好条件を活かしておらず、まだまだのびしろは大きいと考える事もできる。

 言い古された事だとは思うが、角館の観光による実質的な経済効果を高めるには、

 ・ 花見の時期以外の観光客の増加
 ・ 宿泊率の向上

が必須だろう。

 観光客数の落ち込む6,7月、そして11〜3月の寒い時期の観光客数をどうやって増やすか、そして「宿泊したい」と思ってもらえるか、こういった事が当面の課題だろう。
 みなさんいろいろアイデアをお持ちだと思う。私も機会を改めて書いてみたい。


 ご意見、ご感想などありましたらコメントまでお願いします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(*1) ここでは観光客数に着目しているが、「角館」のブランド名を活かして商品が売れるという事もあるので、角館の観光の効果は“観光客数”だけでは判断できないという面もある。
(*2) 角館の宿泊率は花見の膨大な観光客数によって“押し下げ”られていると見る事もできなくはない。花見の時期を除外して通常月でみれば、おそらく4〜5%になるだろう。それでもまだ低いが。

投稿者 taguchi : 2005年11月24日 20:52