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2005年02月16日

【合併 3】デメリットも、メリットも隠さず見せてフェアに

 当初から、合併のメリットと、合併しなかった場合のデメリットが強調されてきたわけだが、合併にもデメリットはあるし、合併しなかった場合のメリットもある。
 一方だけを言うのはアンフェアというものだ。メリットも、デメリットも、みんな机の上に並べて比べてみよう。
 ここでは、いままで言われてきた間違った情報、あまり語られる事のなかった合併のデメリット、単独立町のメリットについて考えてみます。

■当初は、「合併しないと地方交付税が減額される」と言われていた

 先の資料に示したように、当初は合併しないと地方交付税が減らされると言われていた。
 これは間違いで、むしろ逆。


■「合併すると地方交付税が減る」事はあまり説明されなかった

 特例債が使える事はアピールされたが、一方交付税が減ることはあまり説明されなかった。
 合併すると1自治体としては人口が増えるので人口当たりの行政コストが下がるはずという事で、普通交付税は減額になる。
 最初の10年間は、合併しなかった場合と同額が支払われ(算定替え)、11年目からは段階的に減額し(激変緩和)、16年目から合併後の新市の状態に基づいた額になる。
 なので、地方交付税の交付額という観点からは、合併しない方が得。(ここで言っている交付税は、合併特例債の償還用の交付税などイレギュラーなものは含まない。3/11追記)では、どこまで減るかが気になるが、これは明らかにされていない。この件については、次項の財政シミュレーション期間が関係している。


■新市建設計画での財政のシミュレーションが合併後10年間と短い

 上で述べたように合併後10年間は交付税の算定替えがあり、さらに合併特例債の使用期限が合併後10年間なので、合併後10年間だけに着目すれば当然良い財政状態に見える。
 合併後10数年間は特殊な期間であり、新市の財政の将来を見るには短すぎる。最低でも、交付税が新市を基準に算定される16年目、或いは特例債の償還に充てる交付税の交付が終わる年度まで必要だろう。
 10年目以降もシミュレートしてあるものと思われるので公開すべきだ。合併後10年間よりは悪い数字になっていると思うが、それもきちんと町民に見せるべきだろう。


■特例債の使途

 特例債は、何に使ってもよいわけではない。
 特例債は、公共施設を作る為に使う事と規定されている。また、10年間という限られた期間に使わなければならない。
 貯めておいて必要になった時に使うとか、職員の人件費に充てる事はできない。何か施設を作って、10年間で使い切らないといけない。これは、特例債が景気浮揚策という意味合いを持っているためだろう。
 合併後の交付税は減額になるので、維持コストの嵩む施設を作ってしまうと、それが後の新市の財政をますます圧迫する事になってしまう。なので、学校の建替えなど、どのみち作らなければならない施設の建設などに使うのが適当だ(2/21追記しました)。そうでないなら、確実に黒字になる施設、コストが嵩まない事が分かっている施設の建設に使うべきだ。
 「予定外の収入だから、いろんな事に使える」というものではないのですよ。
 特例債の償還(返済)の内、7割は国が肩代わりしてくれるので、その分国から貰った形になるが、しつこいようだが合併すると交付税の交付額が減るので、いつかはそれで帳消しになる。

■合併のメリットは、デメリットと裏腹

 合併のメリットと説明されてきた事は、反面デメリットにもなる。
 町の説明資料に書いてあった合併のメリットを見てみよう。

・『広い視野でのまちづくりが展開できます。(効果的な施設設備)』という事について

 広い視野でまちづくりをすることは結構な事だが、同時にそれぞれの地域の事情に合った施策がやり難くなるというデメリットでもある。
 結婚前の独り者の時は自由にお金が使えるが、結婚すると奥さんの許可をもらわないと使えなくなるのと同じだ(笑)。
 例えば、観光行政を例に考えてみよう。
 角館の観光の問題点は宿泊客が少ないという事だ。この問題を解決するために、専門のコンサルタント業者に角館の宿泊施設の調査を依頼したいとする。これは大きな効果があると私は考えているが、さて、いままではこれを角館町だけで決める事ができた。しかし、合併するとそうはいかない。
 旧田沢湖町出身の議員は、旧田沢湖町にも宿泊施設はあるのだから、角館の宿泊施設だけを対象にするのは不公平なので田沢湖の宿泊施設も対象にすべきだと主張するだろう。じゃぁ、そうしましょうかという話になったとする。ところが、田沢湖町の宿泊施設の数は角館と比較にならないぐらい多いから予算が大きく膨れ上がってしまう。さらに、田沢湖は、宿泊客という点では角館ほど深刻な問題とはなっていないのでこれをやる意味が角館ほどはない。また、宿泊客については田沢湖と、角館は取り合いの関係にあるので、田沢湖出身の議員にしれみれば別にこの議案は通らなくてもOKだ。というわけで、この議案は議会を通らない。
 合併するもの同士が同じような課題を抱えている場合はいいが、それぞれの地域固有の課題の解決は却ってやり難くなってしまう。


・『施設が効率的な配置になり利用エリアが広がります。(類似施設の重複回避)』という事について

 これもそうなんだけど、一般論としては間違ってはいない。じゃあ、この三町村の場合どうなのかと考えてみると、必ずしもあてはまらない。
 大仙市における大曲のように地域の中核都市が存在したり、比較的大きな町が中央に位置するような地域の合併なら、そこに施設を集中させる事によって利用効率を上げる事ができるのでここで言っている事は正しい。
 しかし、この三町村の場合は同じぐらいの規模の二つの町が離れて存在しており、中間地点は田園地帯だ。
 どちらか一方に施設を造れば、他方の住民が困るし、不公平感が生ずる。中間地点に造れば、不公平感はなくなるが、誰にとってもあまり便利ではないという中途半端な事になる。
 例えば、公立角館総合病院と、町立田沢湖病院を統合して一つの病院にする事でより充実した医療ができる可能性はあると思うが、それをどちらかの一方の場所に移転する形で統合したら他方の町の人は困るだろう。では、中間地点に近い西木村に建設したらどうだろうか? 角館からも、田沢湖からも歩いては通えなくなってしまう。

■当初まったく想像しなかったデメリット

 合併協議が進むにつれてだんだん町村間に軋轢が生じてきた。
 これを合併のデメリットというのは適当でないという人もいるかもしれないが、実際あちこちの地域で合併が原因で軋轢が生じている。白神市問題における能代市と、山本郡との間のやり取りは酷かった。
 三町村での協議が進むにつれて、新市としての一体感が醸成されるかと思いきや、逆に町村の思惑が顕になって軋轢が生じてしまった感がある。
 「信頼関係が崩れた」、「2対1の構図が出来た」といったような表現だけであまり多くは語られていない。私も語るべきではないと思うが、推して知るべしである。
 もし、これから三町村での合併協議が続くなら、この2対1の構図はきちんと解消されなければならない。議員の在任特例が適用され、その議会で特例債の使途を決めることを思えばなおさらである。


続く...

--------- 追記 ------------
 間違っていたかもしれない。

 特例債の使途について、『学校の建替えなど、どのみち作らなければならない施設の建設などに使うのが適当だ。』と書いた。
 私は、東小学校、西小学校、西長野小学校を統合して作られる新しい小学校の建設に使うイメージだったのだが、この統合小学校の建設に特例債は使えないのかもしれない。
 というのは、特例債が使える事業は、
 “合併市町村の一体性の速やかな確立を図るため又は均衡ある発展に資するため、及び合併市町村の建設を総合的かつ効果的に推進するために行う公共的施設の整備事業”となっていて、合併と直接関連のない統合小学校の建設には特例債は使えないのかもしれないのだ。
 こちらの長野県の作っている特例債の説明のページにある要件に照らしても、当てはまらないような気がする。

 まぁ、いろいろ理由をつければ可能なのかもしれないけど、どうなんだろう?

投稿者 taguchi : 2005年02月16日 00:45

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